学会誌
論文抄録
『医学教育』50巻・第2号【抄録】2019年04月25日
1. 巻頭言
日本医学教育学会 理事長 鈴木 康之
学会機関誌は学会活動を社会に示し,成果を次世代・後世へ伝える最も重要な位置づけのものです.本誌「医学教育」は日本医学教育学会機関誌として1970年2月25日に創刊され,医学のみならず,歯科医学,薬学,看護学をはじめ,医療人の育成に関する幅広い研究と学会活動を情報発信し続け,今年,第50巻の刊行を迎えることができました.本誌は学会員の研究成果を原著・教育実践研究論文として掲載するだけでなく,先進的な教育実践の紹介,重要課題の特集・招待論文,積極的活動を続ける各委員会の成果報告,会員相互の情報交換の場である掲示板などを通じて,多くの会員・読者と経験の共有を図ってきました.
この特集号は半世紀にわたり医学教育の研究活動と機関誌の発刊を推進してこられた先輩諸氏のご努力に感謝するとともに,創刊号から5編の論文を再録し,学会設立の理念を再確認し,「温故知新」の機会としていただくことを目的としています.創刊号において初代会長の牛場大蔵先生は,「医学教育そのものを研究の対象として学問の場でとらえること,このことなくして医学教育の問題は真の解決をみない」と,本誌の存在意義を端的に記されています.また,「真にわれわれ自身の主体性において,わが国に根をもった医学教育を誕生せしめ,それをどこまでも育て上げてゆくという決意をもつことが必要なのである」と結んでおられます.50巻の歩みをこの言葉とともに振り返り,決意を新たにしたいと思います.
また歴代編集委員のお名前を拝見しますと,まさに日本医学教育学会を背負って来られた先生方であることがわかります.学会活動はプロフェッションとしての社会的責任感とボランティア精神に基づいて行われるものですが,機関誌編集という最も重要かつ多忙な任務を遂行されてきた編集委員諸氏に,また論文評価の根幹となるピア・レビューにご協力いただきました会員諸氏に改めて深く感謝したいと思います.
現在,世界各国で多くの医学教育専門誌が刊行されていますが,本誌はAcademic Medicine(1926年創刊),Medical Education(1966年創刊),Medical Teacher(1979年創刊)と並んで屈指の歴史を誇ります.また掲載論文は国内に留めるには惜しい論文が多く掲載されています.今後,ますます多くの教育実践者に,ご自身の教育経験と研究成果を発信していただき,意見交換と情報共有を行えるプラットフォームとして本誌がさらに活用されること,そして我が国の医学教育が国際的にも発信されていくことを期待いたします.
2.1 巻頭言「医学教育」の創刊にあたって
2.2 日本医学教育学会の発足に際して*2
日本医学教育学会会長 牛場 大蔵*1
*1 慶應義塾大学医学部微生物学教室
*2 昭和44年 8 月30日設立発起人会に引きつづき行われた学街講演会における挨拶(学会設立の主旨と経過)をもととした.
中川 米造
*大阪大学医学部医学概論
懸田 克躬*
*順天堂大学医学部精神医学教室
“医学科学部教育改革への現状と方向”――東大医学部の場合
加我 君孝*
*東大医学生カリキュラム委員会(医学科3年)
掲載にあたり
学会誌編集委員会 編集委員長 武田 裕子
ヒトの学習とその伝承を支える教育
(第20巻・第1号1989年2月25日発行号より)
第1~10・13期編集委員会から 編集委員長 鈴木 淳一*
*Junichi SUZUKI 帝京大学医学部耳鼻咽喉科学教室
出会いと創造,そして評価
(第20巻・第1号1989年2月25日発行号より)
第11~12期編集委員会から 編集委員長 尾島 昭次*
*Akitsugu OJIMA 岐阜大学医学部病理学教室
2年余(2003年秋~2005年末)の編集長の経験
第14期編集委員会から 編集委員長 庄司 進一*
*Shinichi SHOUJI 桔梗ヶ原病院 脳神経内科
編集後記にみる機関誌の歩み
第15期編集委員会から 編集委員長 吉岡 俊正
編集委員会の移り変わり
第16~18期編集委員会から 編集委員長 福島 統*
*Osamu FUKUSHIMA 東京慈恵会医科大学教育センター
次の50年の発展を願って
第19期~現在編集委員会から 編集委員長 武田 裕子*
*Yuko TAKEDA 順天堂大学大学院医学研究科医学教育学
50年前の東大闘争と2500年前のヒポクラテス
加我 君孝*
*Kimitaka KAGA 東京大学名誉教授
学会誌編集委員長:武田 裕子
学会誌副編集委員長:福島 統
編集委員:椎橋 実智男,小林 志津子,錦織 宏,山岡 章浩,西城 卓也,
青松 棟吉,菊川 誠,松山 泰,Marcellus NEALY (Manuscript Editor)
――学習状況との関連とCT使用状況――
李 慧瑛*1 下髙原 理恵*2 緒方 重光*1
要旨:
目的:実習前後における看護大学生のクリティカル・シンキング(CT)を測定し,学習状況との関連を調査する.次にCT使用状況と理由を明らかにする.
方法:学生795名に自記式質問紙調査を行い,統計的分析とテキストマイニング分析を行った.
結果:有効回答数は実習前175名,実習後177名.CT測定尺度平均点は実習前163.70±17.68,実習後171.21±19.03であった. 臨地実習中にCTを用いる状況として,【問題解決】【意見交換】【患者理解】【看護展開】【内省】の5カテゴリーが抽出された.
考察:実習体験によってCT測定尺度総得点が高くなる.学生のCTを用いる状況や理由は,CT得点に影響している.
キーワード:看護基礎教育,看護大学生,CT測定尺度,全国調査,テキストマイニング
Hyeyong LEE*1,Rie SHIMOTAKAHARA*2,Shigemitsu OGATA*1
Abstract:
Introduction: The purpose of this research is to measure the critical thinking (CT) skills of nursing college students before and after practical training, and examine whether situational factors such as purpose and context can affect judgments related to CT.
Methods: We distributed 795 nursing students an anonymous self-administered questionnaire using the scale to assess the CT and free description type questions. The collected data was analyzed using statistical analysis and text mining analysis.
Results: The effective response rate was 22.01% (n=175) before training and 22.26% (n=177) after practical training. The average score of the CT scale was 163.70 ± 17.68 before training and 171.21 ± 19.03 after practical training. Five categories were extracted from the open-ended questions and identified as situations in which CT in used in practical training.
Discussion: The average score of the CT scale rose with practical training experience.
Keywords: nursing basic education, nursing college student, scale to assess critical thinking, national survey, text mining
*1 鹿児島大学医学部保健学科, Department of Fundamental and Clinical Nursing, School of Health Science, Faculty of Medicine, Kagoshima University
*2 鹿児島大学大学院医歯学総合研究科, Faculty of Neurology Gross Anatomy Section, Kagoshima University Graduate School Medical and Dental Sciences
プロフェッショナリズム教育方略の連載に当たって
1. 白衣式
日本医学教育学会 プロフェッショナリズム・行動科学委員会 委員長 宮田 靖志*
要旨:
白衣式は,1993年にコロンビア大学でアーノルド. P. ゴールド教授によって初めて整備された形で実施された.同教授は,医学生がヒューマニズムやプロフェッショナリズムを軽視していると感じており,医学におけるヒューマニズムを涵養することに尽力するための組織としてアーノルド. P. ゴールド財団を設立し,白衣授与式を実施することを後援した.これ以降,臨床自習に入る前の時期に白衣授与式を実施することが全米に広がった.白衣授与式は,医学生が白衣を着用することに由来する責任の意味を理解し,ヒューマニズムとプロフェッショナリズムを自覚することが期待されているものである.本邦でも近年多くの医学部で導入されているが,その実施方法は様々である.
キーワード:白衣授与式,スチューデント・ドクター,医学生の宣誓文
Yasushi MIYATA*
Abstract:
The White Coat ceremony was fist conducted in a well-organized form by prof. Arnold P. Gold at Columbia University in 1993. The professor had been felting that medical students were disrespecting humanism and professionalism, and he established the Gold Foundation, the sponsoring organization for the white coat ceremony. From then, white coat ceremony was spread all over the country. White coat ceremony is expected that medical students understand the meaning of responsibility derived from wearing white coats, and be aware of humanism and professionalism. Although it has been introduced in many medical departments recently in Japan, its implementation method is various.
Key words: white coat ceremony, student doctor, oath of medical students
*愛知医科大学医学部地域総合診療医学寄附講座,Aichi Medical University School of Medicine, Department of Primary Care and Community Health
宮田 靖志*
*愛知医科大学医学部地域総合診療医学寄附講座,Aichi Medical University School of Medicine, Department of Primary Care and Community Health
朝比奈 真由美*
*千葉大学医学部附属病院総合医療教育研修センター, Health Professional Development Center, Chiba University Hospital
地域医療実践をめざした臨床研修の実態把握と 改善への限定的試み
箕輪 良行*
*みさと健和病院 救急総合診療研修顧問, Misato Kenwa Hospital Teaching adviser Training program of General Medicine
(富士研ワークショップ)の記録(第2報)
岐阜大学 医学教育開発研究センター 恒川 幸司
岐阜大学医学教育開発研究センター 藤崎 和彦
セシル・G・ヘルマン(著),辻内琢也(監訳),牛山美穂・鈴木勝己・濱雄亮(翻訳)
定価:12,000円+税,2018年5月刊,金剛出版
日本語版の開発
末松 三奈*1 阿部 恵子*2 安井 浩樹*3 朴 賢貞*4
高橋 徳幸*1 岡崎 研太郎*1 Sundari JOSEPH*5 Lesley DIACK*6
*1 名古屋大学大学院医学系研究科地域医療教育学講座, Department of Education for Community-Oriented Medicine, Nagoya University Graduate School of Medicine, Aichi, Japan
*2 愛知医科大学看護学部クリティカルケア看護学, Critical Care Nursing, Aichi Medical University, Aichi, Japan
*3 美幌町立国民健康保険病院呼吸器内科, Department of Respiratory, Bihoro Municipal Hospital, Hokkaido, Japan
*4 前仙台大学健康福祉学科, (Former) Department of Health & Welfare Science, Sendai University, Miyagi, Japan
*5 Learning and Development Lead at Together in Dementia Everyday and Life Story Network (TIDE)
*6 School of Pharmacy and Life Sciences, Robert Gordon University, Aberdeen, UK
水野 篤*1 河野 隆志*2 服部 英敏*3 西畑 庸介*1
若林 留美*4 中野 直美*5 五十嵐 葵*6
Atsushi MIZUNO*1, Takashi KOHNO*2, Hidetoshi HATTORI*3, Yosuke NISHIHATA*1,
Rumi WAKABAYASHI*4, Naomi NAKANO*5, Aoi IGARASHI*6
*1 聖路加国際病院循環器内科, Department of Cardiology, St. Luke’s international hospital, Tokyo, Japan
*2 慶応義塾大学循環器内科, Division of Cardiology, Department of Medicine, Keio University School of Medicine, Tokyo, Japan
*3 東京女子医科大学循環器内科, Department of Cardiology, Tokyo Women's Medical University
*4東京女子医科大学看護部, Departm ent of Nursing, Tokyo Women's Medical University
*5 慶応義塾大学看護部, Division of Nursing, Department of Medicine, Keio University School of Medicine, Tokyo, Japan
*6 聖路加国際病院看護部, Department of Nursing, St. Luke’s international hospital, Tokyo, Japan