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学会誌

論文抄録

『医学教育』46巻・第4号【抄録】2015年09月25日

INDEX
特 集 医学教育における行動科学・社会科学の諸議論
1. 医学教育における行動科学とは何か
…中村 千賀子
特 集 医学教育における行動科学・社会科学の諸議論
2. 変容する日本の医療環境を生き抜くために
—医学教育と社会科学の協働の可能性—
…星野 晋
特 集 医学教育における行動科学・社会科学の諸議論
3. 現代社会の特徴と医学教育改革の必要性
-社会学の立場から-
…樫田 美雄
特 集 医学教育における行動科学・社会科学の諸議論
4. フィールドで育む共通感覚
―日本の医学教育において人文・社会科学の視点を育成するための方法―
…道信 良子
特 集 医学教育における行動科学・社会科学の諸議論
5. 医学教育カリキュラムへの行動科学・社会科学の導入
-臨床医の立場から-
…若林 英樹
特 集 医学教育における行動科学・社会科学の諸議論
6. 卒後研修における行動科学教育の必要性
…河本 慶子
特 集 医学教育における行動科学・社会科学の諸議論
7. 全体の総括:医療社会・行動学の勧め
-本号の特集の総括として-
…和泉 俊一郎
提 言 「医学教育における行動科学・社会科学」
…第16期医学教育学会準備教育・行動科学委員会
中村 千賀子,星野 晋,沖田 一彦,道信 良子,樫田 美雄,三原 祥子,若林 英樹
原 著 医学科学生における生命倫理観と死生観
…望木 郁代,桑畑 綾香,白石 泰三,堀 浩樹
原 著 問題をもつ学習者の“問題”とは何か:系統的文献検索
…川上 ちひろ,西城 卓也,藤崎 和彦,鈴木 康之
意 見 プロフェッショナリズム特集への意見
「武士道」のプロフェッショナリズムへの適用可能性と「他者の目」
…岩田 健太郎
医学教育における行動科学・社会科学の諸議論
1. 医学教育における行動科学とは何か

中村 千賀子*

要旨:
行動科学について,その起源,大学設置基準の大綱化などから,現在の医学教育におけるその意味や役割を考える.現代の疾病構造をふまえ,全人的医療を支える人間関係を視点として,行動科学教育の基本的要素を整理し,ラボラトリー・トレーニングを利用した態度学習の具体例についても述べる.
キーワード:行動科学,医学教育,コミュニケーション,ラボラトリーメソッド MLT


*社会福祉法人新生会, Social Welfare Corporation SHINSEIKAI
[〒224-0052 神奈川県横浜市都筑区二の丸11-4]
医学教育における行動科学・社会科学の諸議論
2. 変容する日本の医療環境を生き抜くために
—医学教育と社会科学の協働の可能性—

星野 晋*

要旨:
医学教育において準備教育は,臨床で求められる専門知識・技術以外の諸分野の視点・方法について,生涯にわたって学びつづける学び方を学習する過程である.この準備教育において,社会科学は重要な柱の1つである.少子高齢化や慢性疾患への疾病構造の変化により,今後「暮らしの現場のケア」の領域が拡大する日本において,社会科学的なアプローチの重要性はさらに増すであろう.社会科学は医療のおかれている現状や変化の動向を理解する視点や方法を提供し,また臨床現場にあっては,患者や利用者たちが,暮らしや人間関係との関わりにおいて何をなぜ問題としているかを知る視点や方法を提供する.そのような社会科学的アプローチを学ぶには,高年次もしくは卒後研修において,事例性の概念にもとづくケース・スタディやPBLを繰り返す必要があると考える.そのような教育を可能にするためには,今後医療専門職と社会科学者が協働して,教材や教育手法を開発する体制を整えなければならない.
キーワード:医学教育,生涯学習,社会科学 事例性


*山口大学国際総合科学部,Faculty of Global and Science Studies, Yamaguchi University
[〒0 753-8541 山口市吉田1677-1]
医学教育における行動科学・社会科学の諸議論
3. 現代社会の特徴と医学教育改革の必要性
-社会学の立場から-

樫田 美雄*

要旨:
現代社会は,後期資本主義社会であり,社会構造そのものが連続的に変動している.そのため,特定の社会構造を前提とした状況認識は,陳腐化してしまう.したがって,現代の医学教育の課題は,社会の変動に対応して,世界認識を柔軟に変えていく力を育てることである.原則を知識として記憶して現場に当てはめる作業は大事ではない.21世紀の医学教育者は,医学生に,現場から生活文化をデザインする態度をこそ,身につけさせるべきである.
21世紀では,患者の生活文化は,医療の現場化によって支えられる.病院の世紀(20世紀)には,入院生活をモデルに,均質化され,標準化されていた医療の技術と判断が重要だった.しかし,21世紀には,医療技術は,療養者の生活文化に,埋め込まれていくことだろう.すなわち,21世紀の医学教育は,人間の多様な生活文化を理解する行動科学教育を基盤になされる必要があるだろう.
キーワード:医学教育,後期資本主義社会,療養者の生活文化,医療の現場化,行動科学


*神戸市看護大学,Kobe City College of Nursing
[〒651-2103 神戸市西区学園西町3丁目4番地]
医学教育における行動科学・社会科学の諸議論
4. フィールドで育む共通感覚
―日本の医学教育において人文・社会科学の視点を育成するための方法―

道信 良子*

要旨:
日本の医学教育は今,大きな改革の波のなかにあり,日本の医学部における人文・社会科学教育も見直しを迫られている.筆者は,人類学を専門として,研究や教育においてフィールドワークを活用してきた.本稿では,医学教育において人文・社会科学の視点を育成する一つの方法として,フィールドワークが有効であることを示す.その知見にもとづき,フィールドワークが人文・社会科学の視点の育成に留まらず,医療者として求められる基本的な資質の育成につながることを論じる.すなわちその資質とは,同じ文化共同体を生きる人びとに共有される共通感覚である.共通感覚は,さまざまないのちが共存する自然環境のなかで,自分も同じ世界を生きているという感覚的体験を通して育まれる.
キーワード:共通感覚,フィールドワーク,自然環境,医学教育,人類学


*札幌医科大学医療人育成センター,Center for Medical Education, Sapporo Medical University
[〒060-8556 北海道札幌市中央区南1条西17丁目]
医学教育における行動科学・社会科学の諸議論
5. 医学教育カリキュラムへの行動科学・社会科学の導入
-臨床医の立場から-

若林 英樹*

要旨:
心理・行動・社会的な要因の健康や病気への影響は明らかであり,医療におけるそれらへのアプローチは重要である.医学教育のグローバルスタンダードの観点からも,行動科学・社会科学分野を強化した医学教育カリキュラムが必須である.米国の同分野の教育内容は6つのドメイン,健康と病気における心身の相互作用,患者の行動,医師の役割と行動,医師患者の相互作用,ヘルスケアにおける社会的・文化的な課題,健康に関する政策と経済からなる.わが国の文化・社会背景を考慮し,行動科学・社会科学を医学教育カリキュラムに導入するため,教育アウトカム,方略,アセスメント,教員養成の開発を進める必要がある.
キーワード:行動科学,社会科学,医学教育,カリキュラム,心理社会的問題 


*三重大学大学院医学系研究科地域医療学講座,Department of Education and Research in Family and Community Medicine,Mie University Graduate School of Medicine
[〒514-8507 津市江戸橋2-174]
医学教育における行動科学・社会科学の諸議論
6. 卒後研修における行動科学教育の必要性

河本 慶子*

要約:
医師臨床研修は,医師としての基盤形成の時期に,患者を全人的に診ることができる基本的な診療能力を修得することにより,医師としての資質の向上を図ることを目的としており,その基本理念には「医師としての人格のかん養」と「基本的な診療能力を身に付ける」ことが掲げられている.特に,「医師としての人格のかん養」は壮大で医師人生の経過を通じて培う分野でもあり,この時期のプロフェッショナル教育(行動科学教育)の必要性は高い.また,臨床研修期間において最大限の学びと資質向上を図るためには,医学部教育において,素地を育成しておくことが重要と考えられている.本稿では,臨床研修制度の概要・到達目標・修了認定・今後の制度の見直しを紹介し,医師としてのあり方を再考する機会としたい.
キーワード:臨床研修,人格のかん養,行動科学


*厚生労働省近畿厚生局健康福祉部医事課,Ministry of Health Labor and Welfare, Kinki Regional Bureau of Health and Welfare, Medical Professions Division, Department of Health and Welfare
[〒540-0011 大阪府大阪市中央区農人橋1-1-22大江ビル7階]
医学教育における行動科学・社会科学の諸議論
7. 全体の総括:医療社会・行動学の勧め
-本号の特集の総括として-

和泉 俊一郎*

要旨:
ECFMGの声明が発端になりWFMEの Global Standardsに医学部が注目し,その中の要件である「行動科学・社会科学」が,本邦では大学ごとの特色に応じて教えられてきたために,卒前教育のなかで体系づけられていなかったことからクローズアップされた.少子高齢化の日本の社会は,これまでの専門医療・病院志向ではなく“生活者としての視点”も持つ医師が求められている.また初期臨床研修必修化から10年経過し“医師としての人格をかん養”の要件である各種のコンピテンスを明確化し,学習する医学教育が求められている.プロフェッショナリズム・医療倫理・NBE・医療安全等を包括して学習するための,実学としての“医療社会・行動学(仮)”を,実践に必要な教材や方略等を含めて学部教育内で整えなければならない.
キーワード:医学教育,生涯学習,行動科学,社会科学


*東海大学医学部専門診療学系産婦人科学,Department of Obstetrics and Gynecology, Tokai University, School of Medicine
[〒259-1193 神奈川県伊勢原市下糟屋143]
「医学教育における行動科学・社会科学」

第16期医学教育学会準備教育・行動科学委員会

中村 千賀子*1 星野 晋*2 沖田 一彦*3 道信 良子*4 樫田 美雄*5 三原 祥子*6 若林 英樹*7

要約:
提案1:委員会の名称を,「準備教育・行動科学教育委員会」から「行動科学・社会科学教育委員会」へと変更し,行動科学(心理・コミュニケーション含む)と社会科学の教育について検討する.
提案2:行動科学・社会科学教育の実践事例を収集し,データベースを構築する.
提案3:6年間一貫型の行動科学・社会科学教育カリキュラムの開発を行う.
提案4:行動科学・社会科学教育に参加する教員の研修を行い,また,教育技法と教材の開発を行う.
キーワード:準備教育,行動科学,社会科学


*1 社会福祉法人新生会, Social Welfare Corporation SHINSEIKAI
[〒224-0052 神奈川県横浜市都筑区二の丸11-4]
*2 山口大学国際総合科学部,Faculty of Global and Science Studies, Yamaguchi University
*3 県立広島大学保健福祉学部,Faculty of Health and Welfare, Prefectural University of Hiroshima
*4 札幌医科大学医療人育成センター,Center for Medical Education, Sapporo Medical University
*5 神戸市看護大学,Kobe City College of Nursing
*6 (元)東京女子医科大学,Tokyo Women's Medical University (retired)
*7 三重大学大学院医学系研究科地域医療学講座,Department of Education and Research in Family and Community Medicine,Mie University Graduate School of Medicine
医学科学生における生命倫理観と死生観

望木 郁代*1 桑畑 綾香*2 白石 泰三*1 堀 浩樹*3

要旨:
目的:医学教育における有効な倫理教育を検討するために,医学部医学科学生の生命倫理観・死生観を評価した.
方法:医学科第1,2,4,6学年学生,他学部第1学年学生を対象として質問紙調査を実施した.
結果:医学科学生と他学部学生との比較では,入学間もない時点で,生命倫理「安楽死」「ヒトクローン」,死生観「死への恐怖・不安」「人生における目的意識」「死への関心」への態度に差が認められた.医学科学生では,生命倫理「着床前・出生前診断」「遺伝子診断」「生殖補助医療」,死生観「人生における目的意識」への態度に学年間で差が認められた.
結語:医学科学生の生命倫理観・死生観は,大学入学時すでに他学部と差があり,学年ともに変化している.医学科学生の特性をふまえての有効な倫理教育プログラムの構築が,今後望まれる.
キーワード:医学科学生,生命倫理,死生観,医学教育


*1 三重大学医学部医学・看護学教育センター,Center for Medical and Nursing Education, Mie University Faculty of Medicine
[〒514-8507 津市江戸橋2丁目174]
*2 三重大学医学部医学科,Mie University Faculty of Medicine
*3 三重大学大学院医学系研究科医学医療教育学分野,Mie University Graduate School of Medicine, Department of Medical Education
受付:2014年5月4日,受理:2015年6月2日
問題をもつ学習者の“問題”とは何か:系統的文献検索

川上 ちひろ*  西城 卓也* 藤崎 和彦* 鈴木 康之*

要旨:
背景:問題をもつ学習者の問題は体系的に示されてない.教育者が,その問題を適切に理解するため,問題をもつ学習者を表現する英語用語と定義を集約し,その問題を因子ごとに分類する.
方法:系統的文献検索
結果:用語にはdisability, learning disorders , at-risk, difficult, problem, struggle, underperform, unprofessional unsafe, gifted, outstanding,が同定された.問題因子は,学習者の特性,認知,態度,技術に大別された.
考察:この分類は教育者が問題を的確に理解する一助となる.
キーワード:学習者,学生,教員,困難な,問題のある


* 岐阜大学医学教育開発研究センター,Medical Education Development Center, Gifu University
[〒501-1194 岐阜県岐阜市柳戸1番1]
受付:2014年6月19日,受理:2015年6月20日
プロフェッショナリズム特集への意見
「武士道」のプロフェッショナリズムへの適用可能性と「他者の目」

岩田 健太郎*

要旨:
武士道がプロフェッショナリズムにふさわしいモデルを日本医師に提供するか,賛否両論の意見がなされた.新渡戸稲造の「武士道」が成立する条件がいかなるものであるにせよ,それとは無関係に「武士道」のプロフェッショナリズムへの適用は可能である.この議論は「他者の目」のもたらすプロフェッショナリズムへの影響の議論を避けて通ることができないことも内意している.その事実は,教育において所与のものとされていた「評価」という営為がプロフェッショナリズム教育においては一種のアポリアであることも暗示している.
キーワード:武士道,プロフェッショナリズム,「他者の目」


* 神戸大学医学部付属病院感染症内科,Division of Infectious Diseases, Kobe University Hospital
[〒650-0017 神戸市中央区楠町7丁目5-2]
受付:2015年7月16日,受理:2015年7月22日

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