学生・研修医・医療者教育指導者のための学修者評価ガイド
~理論と実践~

日本医学教育学会(21−22期) 学習者評価部会

第2章簡易版臨床能力評価法(Mini-CEX)

3) 日本の卒前臨床実習、卒後臨床研修制度でのMini-CEXの扱い

(2) 医師臨床研修指導ガイドライン

卒後臨床研修制度においては、医師臨床研修指導ガイドライン20202023年版で研修医評価方法としての明確なMini-CEXに関する記載はないものの、同ガイドラインで使用を推奨している大学病院医療情報ネットワーク(UMIN)らが開発した電子版ポートフォリオ(注)(PG-EPOC:旧称EPOC2)でMini-CEXが採用されています。

 そして、卒前教育との連続性を保つため、Mini-CEXの評価項目(7つ)は医学教育コアカリのものと共通しております。

 なお、日本のMini-CEXの評価票における評価項目の7つは、米国内科学会(ABIM)のMini-CEXの評価票の7項目とほぼ一致しています。一方、日本のMini-CEXの評価尺度は、ABIMの絶対評価尺度とは異なり、医学生、研修医、そして上級医としての資質・能力のレベルを念頭においた記載となっているので、観察評価の仕方が異なる可能性があります。

【注】ポートフォリオ:学習成果や一定期間にわたる自己省察を通じての知識、技能、態度や理解の向上、及びプロフェッショナルとしての成長を示す記録を蓄積したもの


PG-EPOC(旧称EPOC2)におけるMini-CEXの評価項目と評価尺度

PG-EPOCのMini-CEXの画面

PG-EPOCのMini-CEXの画面

 医学生向けのコアカリ(および医学部臨床実習用電子版ポートフォリオのCC-EPOC)と、初期研修医向けのPG-EPOCとの、観察評価項目、評価尺度を統合させるとこのような表が作成できます。
 観察評価項目は、病歴~マネジメントの6つと、観察評価全体(前6項目の平均ではない)を示す「総合臨床能力 or 概略評価」の1つ、計7つからなります。ちなみに、医学生用コアカリ(およびCC-EPOC)と初期研修医用PG-EPOCで「総合臨床能力 or 概略評価」だけ用語が一致していませんが、同じ意味であり、観察評価全体を意味していると理解してよいでしょう。

 ここで横の列にある評価尺度に注目しましょう。
 医学教育コアカリ(CC-EPOC)の6段階の文言と、初期研修医向けPG-EPOCの4段階の文言をみればわかるように、医学教育コアカリの4,5,6はPG-EPOCの1,2,3と一致することが分かります。
 そして医学生であれば「4.臨床実習修了時(卒業時)のレベル」、初期研修医であれば「3.臨床研修の終了時点で期待されるレベル」が、医学部、卒後初期臨床研修それぞれで、最低限到達すべきレベルであることを意味します。
 なおABIMのMini-CEXでは「限界」が定義され(「1)Mini-CEXとは——米国における開発の歴史と評価理念」)、プログラム推奨の補習でパフォーマンスを改善する必要性を伝えるものとされていました。しかし、日本のこれらの尺度には、補習による改善を行いつつ修了認定させてよいかまでは明記されておりません。