学生・研修医・医療者教育指導者のための学修者評価ガイド
~理論と実践~

日本医学教育学会(21−22期) 学習者評価部会

第1章教育現場でコンピテンシーとEPAsを評価する際の理解のために

2) 実践編

(2) 初期臨床研修のEPAs(もどき)

 初期臨床研修において研修評価票Ⅲをご覧ください。ここでは4つの診療場面が設定され、それぞれ簡単に(かなり包括的に)EPAsが記載されています。しかし、この評価票をつけようとした場合、より具体的にどんなことができるとこの評価票のレベル3(単独でできる)を達成したと言えるでしょうか?(臨床研修ガイドラインリンク)

 例えば、外来診療研修において具体的にどのような実践ができるようになると「頻度の高い症候・病態について、適切な臨床推論プロセスを経て診断・治療を行い、主な慢性疾患については継続診療ができる」ようになるでしょうか?

 初期臨床研修指導医講習会で実際にグループワークをした結果に出されたEPAsを一例として次に示します。各EPAの横に書かれている数字は初期臨床研修における10個の資質能力(=コンピテンシー)を包含していることを示しています。よく見ると⑤だけがどのEPAにも包含されておらず、欠けています。つまり、このEPAsでは⑤のコンピテンシーは網羅されていない設定になってしまっていると言えます。もちろん、外来診療で修得できない場合には他の診療場面で修得できるようにすればよい…ことになります。


Title: C-1: 一般外来診療
説明:頻度の高い症候・病態について適切な臨床推論プロセスを経て診断・治療を行い、主な慢性疾患については継続診療ができる。

例えば、これを評価するためには…このガイドラインとして以下のようなEPAsが提案されるかもしれません…

EPAs 包含されるCompetency
頻度の高い急性疾患の初期診療ができる ①②③④
頻度の高い慢性疾患の継続診療ができる ①②③④
患者の重症度に合わせた対応ができる ①②③④
必要なEBMを適用できる ②⑧
他科へのコンサルテーションができる ①②③④
多職種との協働ができる ②④⑦
外来保険診療の理解と実践ができる ②③⑥⑦
必要な社会資源を知っている ⑥⑦
届け出が必要な感染症を知っている ①②③④⑥⑦

EPAsの設定、評価は適切でしょうか。

前項のEPAsを達成しようと思った場合…以下のことを検討してみましょう

  • 初期臨床研修修了時点でひとりでこの業務ができるでしょうか?
  • このEPAs修得のために外来診療の研修はどの程度の期間が必要でしょうか?4週間で十分でしょうか?
  • どのような急性疾患や慢性疾患をどの程度の頻度で経験する必要があるでしょうか?
  • これらのEPAsがEntrustableと判定されるにはどのような評価方法でどのくらいの頻度で評価は実施されるべきでしょうか?
  • その根底にあるコンピテンシーは意識されているでしょうか?
  • 評価票をただ、つけるだけで良いでしょうか?