学生・研修医・医療者教育指導者のための学修者評価ガイド
~理論と実践~

日本医学教育学会(21−22期) 学習者評価部会

第2章簡易版臨床能力評価法(Mini-CEX)

7) よくある質問とその回答

外来実習用のブースに限りがあり、都合よく適した外来患者いないので、Mini-CEXが行いにくい環境です。どうしたらよいでしょうか。
従来の臨床実習でも、入院患者を学生に担当させていたと思います。その患者さんの当日の様子を(これまでの病歴を考慮して)問診したり、身体診察することはできるかと思います。十分Mini-CEXが行える環境になるかと思います。
これ以上、観察評価を押し付けたら、各診療科の教育担当者は倒れてしまいます。どうしたらよいでしょうか。
学習者よりも臨床経験が少しでも長い若手医師がいれば、その医師に観察評価をお願いしてはいかがでしょうか。屋根瓦式に評価をお願いすることで、若手医師自身が自分の診療を振り返る機会になります。
 最初は大変かもしれませんが、Mini-CEX評価を受けた学習者は、数年後、若手医師となったときに評価に慣れており、評価に協力的である可能性があります。
すでにMini-CEXの導入が進んでいる大学や研修病院の事例があれば教えてください。
九州大学の事例は文科省から委託された医学教育学会事業のシンポジウムで発表されています(https://core-curriculum.jp/movies の「シンポジウム第4回学習者評価」)。
 また、小児科専攻医プログラムでは全研修施設で年2回のMini-CEXを行えるように指導医講習会を数年来実施しております。
Mini-CEXの結果で、短い期間の単一診療科のローテート研修の合否を判定してもよいのでしょうか。ある年度の前半の評価と後半の評価とでは、結果が大きく異なると思いますが、どのように公平に評価するのでしょうか。
Mini-CEXを診療経験学習の支援ツールとして使用することは、短い期間のローテート研修において、今すぐにでも使っていただきたいと思います。一方、当該診療科をローテートする時期によって評価が変化し、資質・能力の獲得の成長は個々の学習者で様々であるため、進級や修了に関わる重大な合否判定については、診療科を越えた情報を集積したうえで、カリキュラム全体で行われるべきかと思います。
私のような教育経験の浅いものが、評点して、フィードバックコメントを書くことなど、行ってよいのでしょうか。
どの評価者も、初めての観察評価を経験しています。評価回数を重ねていくと、評点が安定し、フィードバックコメントが洗練されていきます。すべての評価者は何らかの臨床経験を過去にお持ちですから、個々の観点から評価することに躊躇なさらないでください。
 一方で、臨床現場での観察評価の妥当性に強く影響するのが評価者の評価能力です。Faculty developmentへの参加等を通じて引き続き評価能力を向上いただくことを願います。
 Mini-CEXを診療経験学習の支援ツールとみれば、評価能力の向上とは、すなわち教育力の向上に他なりません。前向きに取り組んでいただきたいと思います。