学生・研修医・医療者教育指導者のための学修者評価ガイド
~理論と実践~

日本医学教育学会(21−22期) 学習者評価部会

第2章簡易版臨床能力評価法(Mini-CEX)

6) Mini-CEXを使ったフィードバック

 直接観察のフィードバックに関するポイントを解説します。

 まずフィードバックコメントを返す前に、ご注意いただきたい点は、評価者自身が学習者、他のスタッフ及び患者らに対して、医療人としてふさわしい態度や行動をとっていただきたいということです。Mini-CEXの観察評価の場では、評価者自身の態度や行動も、学習者らに観察されているものと認識することが大切です。教育的なフィードバックコメントと相反するような態度や行動をとってしまうと、フィードバックの教育的効果が損なわれてしまいます。

 そのうえでフィードバックコメントを記述する際には以下を意識されるとよろしいかと思います。

  • (憶測での批判をせず)直接観察の内容に基づいたコメントに徹する。
  • コメント自体にフィードバックの目的や重要性が示されている。
  • 次の学習行動に結びついた具体的な提案が含まれている。

 なお、フィードバックは評価票を無言で返すのではなく、学習者と評価者との双方向的な会話があるとよいかもしれません。文章のニュアンスだけでは伝わらないこともありますし、異なる解釈や誤った印象でコメントをとらえた場合、その場で修復することが可能です。

Tripodi N, et al. Med Teach. 2021;43(8):960-965. などを参照


 フィードバックは、評価票への記述に加えて、口頭で行うことを推奨します。
 ただし、学習者が診療を行っている最中の口出しは原則控えることとしましょう。もちろん、患者に危険や強い不快を与えうる学習者の行為、もしくはそのような行為が強く予想される場合、重大な判断の誤りや説明内容の誤りがあれば、途中の口出しは必要です。

 Mini-CEX終了後の口頭フィードバックの1例を Video 2 でお示しします。

ここをクリックしてVideo2を視聴しましょう


ABIMのMini-CEX評価票
 また、「観察者と合意した学習課題の記載」は、学習者への口頭フィードバック直後に、観察者の目の前で学習者に記載してもらうと、有用で発展的な学習が実施されるために、確実かと思います。