医学教育2024,55(2): ~0 特集 インクルーシブ教育を考える 10.障害のある医学生の共用試験における合理的配慮の方針 藤 田   博 一*1 野 田   泰 子*2 荒 関   か や の*3 石 原   慎*4 岡 田   隆 夫*5 清 水   郁 夫*6 清 水   貴 子*7 原 田   芳 巳*8 山 内   か づ 代*9 瀬 戸 山   陽 子*10 要旨:  医学生共用試験は,臨床実習前に行われるCBT(Computer Based Testing)と臨床実習の前後で行われるOSCE(Objective Structured Clinical Examination )があるが,2023年度から臨床実習前の医学生共用試験が公的化されたことを契機に,共用試験実施評価機構内に合理的配慮支援委員会が設置され,各試験の合理的配慮が検討されている.合理的配慮は,まず受験者の申請から始まり,受験者と大学との建設的な対話によって検討が進められる.また,実習を行っている様子を録画したものを提供していただき,できる限り客観的な根拠をもとに検討を行い,受験者が診療参加型臨床実習や臨床研修の場面を想定した合理的配慮を提供し,円滑な試験実施を進めていきたい. キーワード:医学生共用試験, CBT, OSCE, 合理的配慮 10. Policy on Reasonable Accommodations for Medical Students with Disabilities in Common Achievement Tests Hirokazu Fujita*1 Yasuko Noda*2 Kayano Araseki*3 Shin Ishihara*4 Takao Okada*5 Ikuo Shimizu*6 Takako Shimizu*7 Yoshimi Harada*8 Kaduyo Yamauchi*9 Yoko Setoyama*10 Abstract:  The Common Achievement Tests for medical students consists of Computer Based Testing (CBT) conducted before clinical training, and Objective Structured Clinical Examination (OSCE) conducted before and after clinical training. Since the publicization of the Common Achievement Tests for medical students before clinical training in 2023, the Committee for Reasonable Accommodation has been established within the Common Achievement Tests Organization (CATO), where reasonable accommodations for each exam are being considered. Reasonable accommodations begin with an assessment based on requests from candidates and proceed through constructive dialogue between candidates and universities. Additionally, recordings of practical training sessions are provided to facilitate objective assessments, enabling the provision of reasonable accommodations tailored to candidates’ participation in clinical training and internships, thereby ensuring smooth examination processes. Keywords: common achievement tests, Computer Based Testing (CBT), Objective Structured Clinical Examination (OSCE), reasonable accommodations はじめに  医学生共用試験は,臨床実習前に医学生の知識,態度及び技能の評価を行う試験として,2005年からComputer Based Testing(以下,CBT)とObjective Structured Clinical Examination(以下,OSCE)が実施されてきた.また,2020年からは臨床実習の総括的評価として臨床実習後OSCEが実施されてきた.さらに,臨床実習前に行われてきたCBTとOSCEは,2023年度から医師法に基づいた公的試験として実施されている.この試験実施にあたっては,合理的配慮を提供することが医学生共用試験においても求められており,医療系大学間共用試験実施評価機構(以下,機構)内に合理的配慮支援委員会(以下,委員会)が設置され,2023年6月から活動を開始した.約1年間が経過して,この新しい取り組みを総括し,2024年度の実施に向けて,医学生共用試験における合理的配慮の意義を多くの医学生や教職員に知っていただき,「インクルーシブ教育」の一つとして理解を深めていただくことが本稿の目的である. 医学生共用試験とは  臨床実習前に行われる医学生共用試験は,診療参加型臨床実習にて医行為(医師法では「医業」と規定されている)を行ってよいか評価するために実施される.これには,コンピュータ画面上に提示される五肢択一問題などによって知識の修得度を評価する試験(CBT)と,患者さんに接する態度や診察の仕方,基本的な技能の修得度を模擬患者やシミュレータを利用しながら評価する試験(OSCE)の2種類の試験があり,その両方の試験に到達することが求められる.  臨床実習の終了後に行われる医学生共用試験では,OSCEが実施されているが,医学生が大学を卒業させてもよいと判断できる臨床能力を修得したか,卒業後の臨床研修を開始できるレベルに到達できたかを評価する試験である1). 医学生共用試験の歴史  共用試験は,1987年,「医学教育の改善に関する調査研究協力者会議」(当時の文部省)において,医学生が見学だけでなく,病院の医療チームの一員として診療に参加して経験を積みながら学習する診療参加型臨床実習の導入,医療面接・診療技能教育の必要性が指摘され,さらに,1991年,旧厚生省健康政策局諮問機関「臨床実習検討委員会」において,医学生が医行為を行うための違法性阻却要件として「臨床実習開始前の学生の評価を適切に行うこと」が提言された.  その後検討が重ねられ,2001年3月,文部科学省の諮問機関である「医学・歯学教育の在り方に関する調査研究協力者会議」から「21世紀における医学・歯学教育の改善方策について~学部教育の再構築のために~」が報告され,医学及び歯学教育のモデル・コア・カリキュラムが提示され,それに基づく臨床実習開始前の学生の適切な評価システムの構築のための大学間の共用試験システム創設についての提言等がなされた.2002年に共用試験実施のために,共用試験実施機構が設立されトライアルが重ねられ,2005年12月に第1回の正式実施となった.また,臨床実習後OSCEは,2017年からトライアルが開始され,2020年から正式実施となった.  さらに,2021年に医師法の一部改正が行われ,2023年4月から臨床実習前に行われる医学生共用試験(CBT及び臨床実習前OSCE)に合格した医学生は,臨床実習において医業(医行為)を行うことが可能となった2). 医学生共用試験における合理的配慮  医学生共用試験実施の基本的な方針は,厚生労働省医道審議会(医師分科会医学生共用試験部会)にて認められた「医学生共用試験要綱」にて規定されている3).この要綱には「障害,疾病その他の事由を理由として受験上の配慮を希望する受験者への対応」の項目にて医学生共用試験において合理的配慮を行うことが明記されている.これに対応するため2023年6月,機構内に合理的配慮支援委員会が設置された.委員会では,臨床実習前におけるCBTと臨床実習前OSCEだけでなく,臨床実習後OSCEにおける合理的配慮も検討を行っている.この委員会の前身として,2022年度に医学系OSCE実施管理委員会に「インクルージョン支援委員会」を設置し,OSCEの合理的配慮を検討してきたが,臨床実習前の医学生共用試験の公的化に伴い,CBTの合理的配慮も検討する独立した委員会となった.このような仕組みができる前は,Q&Aとして機構へ問合せが行われ,個別に対応されていた. 2023年度の概要  委員会は,CBT及びOSCEに関連する委員会に所属する委員に加え,試験の公正性,公平性を担保するために,機構内の各種委員会に所属していない外部委員から構成されている.また,必要に応じて弁護士の助言を得ることも可能な仕組みとした.また,比較的申請の多い領域と予想された整形外科,脳神経内科,精神科を専門とする委員が所属している.さらに,医学生共用試験における合理的配慮は,何らかの疾患や障害のため,CBT及びOSCEの実施要項から外れる運用が必要となる場合を申請の基準とした.したがって,実施要項では持ち込むことのできない物品を持ち込む必要がある場合や,試験室内にて介助者を必要とする場合等,さまざまな理由で申請を行っていただいた.委員会発足の2023年6月から2024年1月末までの申請は,臨床実習前の医学生共用試験(CBT及びOSCE)は55件,臨床実習後OSCEは43件であった.その内訳は表の通りであった.これら98件のうち31件は,試験直前の外傷や疾患等,急性の障害による申請であった(表).  最も多かったのは,四肢の障害や外傷であり,その多くは前述の急性の障害であった.しかし,慢性的に神経筋疾患のため四肢の筋力低下がみられる受験者に対しては,どのような試験実施方法が適切か判断に苦慮することもあり,大学の試験関係者と受験者に直接面談を行うこともあった.  次に多かった申請は聴覚障害であった.聴覚障害の程度の軽重はいろいろあり,補聴器の装着でほぼ問題のない申請から,波形で聴診音を判断するものまでいろいろあった.その中で,特に問題になった点は,突発的な災害発生時は,各受験者がそれぞれの安全確保をしなくてはならないため,聴覚に障害がある場合,周囲の避難援助が期待できない状況が発生する可能性を考える必要があり,大学とさまざまな議論を重ねたことがあった.  CBTでの申請は件数としては多くなかったが,色覚多様性についての申請があった.CBTの問題は,ユニバーサルデザインに基づいて作成されているが,一部の染色標本等,色で識別する必要がある問題への対応が必要となる.また,CBT方式における合理的配慮については,独立行政法人大学入試センターから,「文字サイズの変更機能,フォントの種類の変更機能,図表の拡大機能,読み上げ機能など民間事業者が開発するソフトウェアにも実装されている機能に加え,点字ディスプレイのサポート,マウス操作(ドラッグ&ドロップなど)による解答が困難な受験者が物理キーポードでの解答を可能とする設計など,配慮が必要な受験者のユーザビリティも考慮したソフトウェアの開発が必要」4)と報告されている.共用試験のCBTでは,全てがソフトウェア等で対応できているわけではないが,別の方法をとることで対応が可能なものもある.例えば,マウス操作ができない受験者に対しては,介助者が,マウス操作を代行するなどの手段を検討することができる. 合理的配慮の判断  全国の医学生が受験し,同じ基準で判定する必要がある医学生共用試験では,公正公平な試験実施が特に重要視される.当然,これまでの共用試験も公正公平な試験実施を行ってきたが,合理的配慮については,前述の通り,2023年度実施から独立した委員会が判断するようになったため,いろいろな申請も初めての経験が多くあり,試行錯誤しながら進むこととなった.  試験の公正性公平性という「全体」を意識しながら,障害に応じた「個別」の案件について検討する事は簡単なことではなく,委員会内においてもいろいろな議論を重ねながら進めた.その中で,重要視したのは,受験者自身がどのような考えを持っているかという点だった.このことは,合理的配慮の提供を考える上で,重用すべき点でもあるが,受験者の考えを把握することは意外と難しかった.2023年度は受験者の意向を把握するために,①大学の担当者との面談を通じて,②受験者にアンケート形式で回答を依頼,③オンラインで直接面談のいずれかの方法をとった.③の直接面談が一番正確に受験者の意向を把握できるかもしれないが,委員会との面談は日程調整を行うと夜間にならざるをえないことが多く,また,面識がない委員との面談自体も大きな負担になると考えられたため,実際は①の方法をとることが多かった.さらに,受験者の身体状況を確認するために,実習等で診察手技を行っている場面を録画していただき,委員会で共有して合理的配慮を検討した事案も多くあった.こうすることによって,文書での申請では分かりにくい部分が正確に判断できるようになった. 2023年度の事例を振り返って  2023年度に申請された事例を振り返り,委員会内でいろいろ議論となった点についてまとめてみたい. 1. 受験者本人の意向を確認できていない段階での申請  2016年文部科学省が示した「障害のある学生の修学支援に関する検討会報告(第二次まとめ)について」では,合理的配慮の決定手順を示しているが5),その最初に「障害のある学生からの申出」とされている.したがって,医学生共用試験においても合理的配慮の申請は,受験者からの申し出から始まるものである.その点について,周知が十分でなかったこともあり,大学の担当者から申請をされていた事例が多くあり,委員会から改めて受験者の意向を確認していただくよう大学へ依頼した. 2. 試験直前の外傷等で一部の課題が受験できない  試験直前に,部活動等で骨折や靱帯損傷といった外傷や,何らかの理由で四肢の手術を受けたためリハビリテーション中といった事例が多くあった.OSCEでは,技能を評価する項目もあるため,その技能が実施できないという申請である.こういった事例は,できるだけ回復後に追試験を受験することを推奨していたが,進級判定や臨床実習の日程上,回復するまで待てないといった大学の事情もあり,判断に苦慮した事例があった.それぞれの状況が異なるため個別対応となったが,比較的短期間で回復可能な理由で一部の課題において評価できないのは,公正公平な試験を堅持するために慎重に判断を行って実施していただいたが,回復後に受験するのが原則だと考えている.また,周産期と試験日が重なる例もあった.OSCEでの身体を大きく使う課題では,妊娠経過に対するリスクがあるため,通常の実施ができない課題があり,慎重な判断を必要とした. 3. 恒久的な障害のため,受験できない課題(技能)がある場合の対応  何らかの理由により基本的には回復が見込めない恒久的な障害がある場合は,合理的配慮を行った上で試験実施を行う必要がある.この場合は,ただ単に医学生共用試験を合格すればよいという視点だけではなく,将来,医療現場での実習や研修を見据えて試験実施の方法を検討した上で,医学生共用試験の実施方法を検討した. 4. 試験の時間延長について  何らかの理由により試験時間の延長が必要と考えられる申請が多くあった.2023年度はCBTにおいて時間延長の申請はなかったが,OSCEにおいては多く検討を行った.その際,どれくらいの時間延長が妥当なのかが問題となる.5分の試験に対して,感覚で「2分延長」という具合に決めてしまうと,試験の公平性に支障が生じるため,何らかの根拠を持って決定しなければならない.そのため,多くは実際の実習中の動画を提供していただき,受験者のパフォーマンスを確認した上で,試験時間の延長を,根拠を持って決定した.この方法をとっても,判断が困難だったのが,「吃音」による申請例だった.吃音は,普段の実習と実際の試験では緊張感が異なるため,症状が大きく変動する可能性があるため,当日どの程度の症状となるか検討が困難であった. 5. 合理的配慮の提供を受ける受験者の安全確保  前述したが,試験中に地震や火災等の災害が起きた場合,各受験者はそれぞれ自分自身の安全を確保して避難する必要があるが,下肢の障害や聴覚障害等,自立して避難できないおそれ,すなわち,避難に際して何らかの援助が必要な受験者の安全確保について大学から指摘があり,検討した事例があった.その事例では,介助者に試験会場の近くで待機していただいた.この点については,大学で事前に危機管理マニュアルの作成の際に検討していただく必要性を改めて認識した. 2024年度の合理的配慮の方針  医学生共用試験では,合理的配慮の対象を比較的永続的な障害を基本としている.したがって,試験直前の外傷等,受験を妨げる要因が一時的であり回復が可能である場合は,その回復を待って受験することを強く推奨する.前述したとおり,回復可能な外傷のため,一部の試験問題や課題を評価できずに診療参加型臨床実習を行うこととなれば,その医学生の持つ知識や臨床能力を適切に評価できたことにはならず,医療を受ける国民に対して誠実とは言えない.したがって,合理的配慮の申請理由となった「何らかの障害」が一時的で回復可能なものであるか否かについて,最初に検討する必要がある.さらに,何らかの問題を抱える心身の状態(外傷や妊娠中等)で受験し,その結果,外傷が悪化した,妊娠の経過に異常が生じた等,重大な問題が生じた場合,たとえ本人の強い希望で受験したのであっても,受験を許可した大学及び機構にも法的な責任が生じると弁護士から指摘があり,受験可否の判断は慎重に行う必要がある.  医学生共用試験のための合理的配慮は,評価の方法や内容は原則として変更せず,公正公平な評価がなされるために,診療参加型臨床実習を見据えた試験実施方法を検討する.また,急性の外傷等,一時的な機能障害は追試験の対象とすることを原則とする.  以上の原則を確実にするために,「医学生共用試験における合理的配慮の基本的考え方」6)を受験者,大学教員向けに作成し,CBT及びOSCE実施要項の附録に収載した. 2024年度の合理的配慮の申請について  2024年2月に開催された医学生共用試験OSCEの全国説明会において,以下の点について強調した. 1. 受験者への情報提供  医学生共用試験CBTとOSCEの実施要項に附録として掲載した「医学生共用試験における基本的考え方」を学生に提示していただき,合理的配慮について理解を促し,次に述べる受験者から申し出ができるように配慮する必要がある. 2. 受験者からの申し出  「医学生共用試験における基本的考え方」を受験者や将来受験する予定の低学年にも周知していただき,受験者自ら合理的配慮の申し出ができるように配慮していただく. 3. 受験者と大学との意見交換  受験者から申し出があったら,大学は受験者の状況や考えを把握し,公正公平な試験実施を前提として,将来の臨床実習や医師として働く場面を想定した試験の実施方法を検討いただき,委員会へ申請書を通じて提案していただく.試験実施方法については,同じ障害であっても,その背景が大きく異なることから個別性が高く,受験者の意向や大学の受け入れ状況を踏まえて検討していただく.その後,事例に応じて,文書やオンライン会議を通じて,委員会と大学が対話し,合理的配慮を検討する.事例に応じて,受験者の意向は大学との対話以外に,委員会が直接受験者本人と文書やオンライン会議で意向を確認したりすることも検討する. 4. 妊娠中の受験者に対する考え方  医学生共用試験の受験にあたっては,臨床実習前OSCEにおける救急領域の課題に代表されるように,大きな身体的な動作が必要となる場合がある.また,試験の運営上,長時間の待機が必要となる場合があり,身体的な負担が生じる.また,CBTにおいても,長時間にわたってコンピュータの前に座って受験するため,大きな身体的な負担が生じる.前述の通り本人が受験を希望したとしても,大学や機構が受験を許可する以上は,法的な「責任」がともなうことから,妊娠中及び出産後の受験は慎重に検討する必要がある.特に,労働基準法にて就業が禁止とされている期間の受験は望ましくないと考えられる.出産前については,出産予定日の6週間前(双子以上の場合は14週間前)から産前休業を請求することができ,産後は,8週間(本人が就業を請求し,医師が支障ないと認めた業務に就く場合には6週間)を経過しない女性を就業させることはできないとされている.身体的負担の観点から,その期間の受験は推奨できない.加えて,妊娠,出産後の経過において何らかの異常を認めている場合は,受験者が希望したとしても受験者の安全を守る観点から受験は認めることは適切ではない.したがって,妊娠中,出産後の受験を検討する場合は,主治医とよく相談し,試験日時点での状態でOSCE,CBTの受験が可能であるか,安全に受験するために,何か特別な条件が必要であるか,といった観点を盛り込んだ診断書の作成を依頼することとなった.また,受験する場合,大学は危機管理マニュアルを整備していただき,緊急事態に対応できるよう対策を取っていただくことになる. 5. 診断書の扱い  基本的には診断書の提出は不要としている.大学を通じて申請が行われるため,大学が当該受験者の障害等を把握していれば問題はない.しかし,前述の通り妊娠や外傷がある場合は,受験によって状態が悪化することも考えられるため,主治医の見解を求めるために,診断書の提出を依頼する.診断書には,妊娠の項目でも述べた通り,受験日時点で受験が可能であるか,安全に受験するための特別な条件等を盛り込んでいただく必要がある. まとめ  日本において,入試や公的な試験では本人からの申請に基づき合理的配慮が提供されている.一方,受験者の態度及び技能を評価する試験において合理的配慮が提供される公的な試験はなく,機構では前例のない取り組みとなった.2023年から医学生共用試験(CBT及び臨床実習前OSCE)が公的化されたことを契機に,機構では委員会を発足させ,臨床実習前の医学生共用試験に加えて,臨床実習後OSCEも合わせて合理的配慮の取り組みを開始させた.  合理的配慮は受験者本人からの申し出であること,公正公平な試験を行うために,原則として評価の変更は行わず試験実施方法を検討すること,その試験実施方法を検討するために,大学,受験者,委員会(機構)が建設的な対話を行い,受験者ごとに個別的に検討を行うことを大切にし,単に試験に合格すればよいとはせず,診療参加型臨床実習や臨床研修が円滑に進むことを支援していきたい. 文 献 1) 公益社団法人医療系大学間共用試験実施評価機構. 共用試験について-共用試験の概要, URL: http s://www.cato.or.jp/cbt/establish/index.html(accessed 1 March 2024). 2) 公益社団法人医療系大学間共用試験実施評価機構. 共用試験について-導入の経緯, URL: https://www.cato.or.jp/cbt/history/index.html(accessed 1 March 2024). 3) 公益社団法人医療系大学間共用試験実施評価機構. 医学生共用試験要綱(2022年11月8日発行), URL: https://www.mhlw.go.jp/content/1080300 0/001024161.pdf(accessed 1 March 2024). 4) 独立行政法人大学入試センター. 大規模入学者選抜におけるCBT活用の可能性について(報告) (令和3年3月24日),p.24, URL: https://ww w.dnc.ac.jp/research/cbt/cbt_houkoku.html(accessed 1 March 2024). 5) 文部科学省. 障害のある学生の修学支援に関する検討会報告(第二次まとめ)について(2017年4月), URL: https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chousa/koutou/074/gaiyou/1384405.htm(accessed 1 March 2024) 6) 公益社団法人医療系大学間共用試験実施評価機構. 医学生共用試験における基本的考え方. 2024年度医学生共用試験CBT(OSCE)実施要項巻末附録 *1 高知大学医学部附属医学教育創造センター, Center for Medical Education Development, Kochi Medical School, Kochi University *2 自治医科大学医学部解剖学,Department of Anatomy, School of Medicine, Jichi Medical University *3 埼玉医科大学医学教育学,Department of Medical Education, Faculty of Medicine, Saitama Medical University *4 藤田医科大学臨床医学総論,Department of Introduction of Clinical Medicine, Fujita Health University *5 順天堂大学医学部医学教育研究室,Department of Medical Education, Juntendo University Faculty of Medicine *6 千葉大学大学院医学研究院医学教育学, Department of Medical Education, Chiba University Graduate School of Medicine *7 聖隷福祉事業団,Seirei Social Welfare Community *8 東京医科大学医学部医学科医学教育学分野,Department of Medical Education, Tokyo Medical University *9 千葉大学大学院医学研究院地域医療教育学, Department of Community-Oriented Medical Education, Graduate School of Medicine, Chiba University *10 東京医科大学教育IRセンター,Institutional Research Center, Tokyo Medical University 受付:2024年3月25日,受理:2024年3月25日