学生・研修医・医療者教育指導者のための学修者評価ガイド
~理論と実践~

日本医学教育学会(21−22期) 学習者評価部会

第1章教育現場でコンピテンシーとEPAsを評価する際の理解のために

1) 基本編

(4) EPAs (Entrustable Professional Activities)とは

 Entrustable Professional Activities(以下EPAs)はコンピテンシーと現場での実践能力の目標との乖離を埋めるために、ten Cateによって2005年に提唱されました。コンピテンシーは医師が持つべき能力を教育し、評価できる具体的な記述にしたものです。しかし、個々のコンピテンシーの評価は非常に難しいので、EPAsは医療現場での実際の診療実践を評価対象としました。

 学習者が適切に到達目標を達成した(コンピテンシーを修得した)として, その際に現場において指導者が監督していなくても信頼して任せる(Entrust)ことのできる(able)専門職としての現場での実践(タスク)や責任の1単位を指しています。 正式には日本語には翻訳されておらず、「信託遂行可能専門実践力」もしくは「独立遂行可能専門実践力」のような意味合いになります。 もともとは卒後のコンピテンシー基盤型医療者教育において用いられることを目的としていましたが、 現在は北米を中心に卒前も含めて広く医療者教育全般に用いられるようになってきています。そして、EPAsには修得にかかる時間的枠組みも含まれており、 現場での観察評価が可能であることが必要とされています。コンピテンシー基盤型教育においてそのアウトカム=コンピテンシーは学習者が修得すべき包括的能力ですので、そこには知識、専門的態度、技術などが含まれ、それらは単純に3つの領域に分類することはできません。 つまり、EPAsも上記の3領域を包括的に含みつつ、具体的に観察評価が可能である業務単位として表されるべきでしょう。

 我々、医療者は研修修了後にひとりでできなくてはならない業務があるからこそEPAを設定してそれを評価しなくてはならないのです。

Ten Cate O, Chen HC, Hoff RG, Peters H, Bok H, van der Schaaf M. Med Teach. 2015. 37(11):983-1002.